当社ではその企業で活躍できる求職者を入社させ、
活躍出来るようになっていくまでのプロセスを
オリジナルのSKY理論という切り口で説明しています。
それは
▼ S;知ってもらう
▼ K;価値観を分かち合う
▼ Y;役割を分かち合う
というのものです。
採用においては、求職者との関係性が低い段階から
順を追って
S(知ってもらう)
→K(価値観を分かち合う)
→Y(役割を分かち合う)
という順番を意識しながら関係性を
深めていくことをお勧めしています。
知ってもらうとは、まず、働く場としての会社を
求職者に知ってもらうということです。
ポイントは「働く場」として・・・という点です。
ほとんどの場合、入社前の人はこれから入ろうとする
会社の事を全くと言っていいほど知りません。
仮に上場企業のような有名企業で、
多くの情報が開示されている会社であっても
「そこで働く事」に関する深い情報を
手に入れる事はなかなか難しいものです。
この情報をしっかり発信していかないと、
本来なら活躍できる能力を持つ人が応募して来ない
結果になってしまいます。
例えば、ハンバーガーチェーン店の仕事には、
店頭でのハンバーガー調理と販売以外にも、
広告をはじめとするマーケティングや商品開発、
不動産や立地開発、店舗デザインや厨房機器開発、
世界を股に掛ける仕入れ業務や物流システム、
AIを含む情報システム、経営戦略室や投資家対応、
もちろん人事や経理・財務という部署など
様々なプロがいるはずです。
しかし、「ハンバーガー屋さん」としか
認識していない人にとっては、
店舗での調理・販売業しか
意識出来ていない事が多いのです。
これでは料理好き、接客好きな人しか応募して来ません。
また、その事業にどんな具体的な業務があり、
そこにどんなやりがいや喜びがあるのかを
考えもせずに入社してしまうと、「就職」ではなく、
「就社」になってしまい、
特にやりたいことがある訳でもないけれど
取りあえず入ってみるか・・・という社員が増える
結果になっています。
そして、往々にしてミスマッチが起こってしまうのです。
このように、自社の事だけでなく、自社で「働く事」の
情報をしっかり発信する事は優秀かつマッチング度合いの
高い社員の獲得のためには非常に重要なポイントに
なってきます。
次に価値観を分かち合うとは、
会社の価値観とでも言うべき企業理念や
それに基づくビジョン、行動指針やクレドなど、
会社が考える良し悪しの基準を
具体的に知ってもらう事と、求職者が個人的、
あるいは社会人として大切にしている価値観を
しっかり共有し合うと言う事です。
社風を知ってもらうと言い換えても
良いかもしれません。
人が働く上で得る報酬は何もお金だけではありません。
組織に属する安心感、成長出来る環境や仲間との達成感、
お客様からの感謝の言葉や、
そんな貢献ができる自分でいられる満足感など、
様々な「報酬」を得ているのです。
大切なのはお金には多寡軸(多いか少ないか)しか
ありませんが、その他の報酬は精神的な喜びがあって、
その喜びの方向性は人によって違うという事です。
もし会社の思う社会貢献の方向性と
社員のやりがいの方向性がリンクしなかったら
どうでしょう?
自分以外の部署内の全員が喜んでいる意味が
さっぱり分からないような社員がいたらどうでしょう?
もちろん得られる「報酬」が少ないため、
楽しくもありませんし、頑張りも効きません。
あるいはお客様そっちのけで給与アップを
求めてくるかもしれませんし、
きっと早期に退職してしまうでしょう。
やる気の落ちた社員を後になって
「お荷物扱い」するのは簡単ですが、
そのような「お荷物」を、そもそも作らないように、
しっかり価値観を分ち合う機会を
面接や様々な交流の中で持っておく事が肝要なのです。
最後に役割を分かち合う重要性についてお話しします。
会社と従業員の価値観の重なりが多ければ
ミスマッチを防ぎやすくなります。
しかし、辞めなければそれで良いかといえば、
そうではない事は明らかです。
従業員にはやりがいを持ってしっかり働き、
成果を出して欲しいものです。
そうなる環境を整える事で、
従業員に、より多くの報酬を提供できる原資が
発生することになり、それが更なるやりがいを生む
という好循環が生まれます。
では、そのような環境とはどの様なものなのか?
それが、役割を分かち合っている状態の実現です。
人が働くモチベーションを高く持つためには
2つの要素が必要であると言われています。
一つは不安なく安心して働ける事。
そしてもう一つはやりがいを持って前向きに働ける事です。
そのためには労使関係の中に片務的な依存のない
健全な役割の相互期待関係が構築されている必要が
あります。
会社に行っても役割のないことがどれだけ悲しいことか
想像してみたらわかるでしょう。
一方で社員も求められる役割にしっかり応えられる様に
一定の努力をせねばなりません。
また、会社に求められていること、期待されていること、
そして評価に値する部分は評価されていることなどを
社員が実感できる様な仕組みを構築する必要があります。
それが結局は成果の発現と採用力の向上に繋がるからです。
特に、現在新卒の内定者を抱えている企業では
この役割の分かち合いをしておく事により
大きな離脱防止効果が期待できます。
さらに入社前研修によって内定者同士や
内定者と先輩社員との人間関係を深めておくと
より複雑な役割関係が構築され、より強固な
入社意思が醸成されます。
この様に、会社を知ってもらい、価値観を分かち合い、
役割を分かち合うという3つのポイントを段階的に意識して
採用プロセスを組み上げることで人材調達力は大きく向上します。
また採用後も、常に社員に会社の考え(方針や戦略)を
知ってもらう努力をし、その根底にある会社の価値観
(方針や戦略を導いたビジョンや経営理念との関係性)と
社員のビジョンやライフプランを面談等を通じて分かち合い、
それを実現するための社内環境づくりと
その環境におけるパフォーマンスの最大化に対する
社員のコミットがなされるような人事制度の構築が肝要です。
では、これを具体的にどうしていけばよいのかについては、
また次回以降にお話しします。