コラム

決めた行動を続ける熱意を、持ち続けられる理由はあるか?(後編)

コラム,新着情報 2017/03/17


【参謀の眼】

前回は、なぜ、新しいプロジェクトや
新規事業を立ち上げるのが難しいのか、
ゼロから1を生み出すプロセスから説明しました。

決めた行動を続ける熱意を、持ち続けられる理由はあるか?(前編)

今回は、社内でそれを可能にさせるための
対策についてお話ししたいと思います。

その前に、確認しておかなければならない事が
あります。

それは、そのプロジェクトや新規事業そのものに
対し、担当者は燃えるような情熱、
熱意をそもそも持ってはいない場合が
ほとんどであるという事実です。

もちろん、「絶対このプロジェクトを成功させて、
社内でひと旗上げたい!」とか、
「役職や給与アップを実現したい!」とかいった
情熱はあるかもしれません。

しかし、子供の頃からの夢だった
サッカー選手になるために
言葉もわからない外国へ留学するとか、
アイドル歌手になるために
カバン一つで何の身寄りもない東京へ
出て行く・・・といった、
目標「そのもの」が目的と
なっているような高いモチベーションは
ありません。

Youth Soccer Players standing together Rear View

目標そのものではなく、それを達成した暁に
得られる付随的なものを得ることが
目的となっているため、
本当の意味での熱意がこもっていない状態で
プロジェクトは始まります。

プロジェクトや新規事業の成功そのものが
嬉しいのではなく、成功を通じて得られる評価や
昇給が嬉しいという状態と言えます。

したがって、今のポジションを捨ててまで、
あるいは、社長に歯向かってでも
このプロジェクトを絶対に成功させるという
「信念」めいたものを期待するのは
難しいところです。

基本的に、人は得られると思っている
メリット以上の頑張りは出来ないものです。

一時的には頑張れたとしても、
それを継続する事は出来ないのが普通です。

一方、過去に事例のないプロジェクトの
遂行や新規事業の立ち上げには、
正解のない世界をさまよい、
試行錯誤をしながらその会社にとっての
「正解」を探していくプロセスを辿ります。

しかし、経営者たる社長は
「世の中にThe bestなんて存在し得ない」
と本能的に知っています。

あるとしたら、それは、
その時点でのベスト=My bestを
常に更新し続ける事だと知っています。

そうすることでしか、
この移り変わりの早い世の中で
The bestに近づく事など出来ないからです。

仮説と検証を繰り返して「正解」に
近いものを探して事業を立ち上げていく過程は、
例えの燃えるような情熱を傾けていたとしも、
もどかしい部分があります。

プロジェクトの責任者は、あらゆるリサーチをして、
彼なりにThe bestと思われる提案を上司である社長に
行います。

もちろん、それはThe bestではありません。

その責任者におけるMy bestを
提案しているだけです。

実際には、その担当者のMy bestは
単なるたたき台でいかないのです。

その繰り返されるたたき台を見ていく中で
社長自身の思考が整理され、
紆余曲折を経ながら My bestを更新していく
過程であるという事実を知らずに。

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新規事業をチームで立ち上げる時には、
このプロセスそのものが、
会社のMy best すなわち
The bestを作っているのであるという事実を
関わる全ての人が事前に知っておくことが
肝要です。

先に言えば説明ですが、
後から言われるとそれは言い訳に
なってしまうのですから・・・。

社内プロジェクトや新規事業の
立ち上げにおいては、この仮説と
検証(トライ・アンド・エラー)の中で
起こるエラー(ミス)を上司や社長から
言い渡されます。

そして、その人は、その事業を
立ち上げるように指示した張本人でも
あります。

先述の通り、確たる情熱をもたない担当者からは
「そんなに言うなら、自分でやってくださいよ!」と
いう不満の声が聞こえてきます。

そして結局は、上司に否定されるのが
怖くなって提案が止まってしまったり、
社長の思いつきを「継ぎはぎ」しただけの
薄っぺらい企画が進行していったりします。

そんな「裸の王様」が指揮したプロジェクトは
うまくいくはずがありません。

これが、新規事業がうまくいないない
大きな理由の一つです。

世の中、ビジネスにおける困難を
乗り越える為の社員のモチベーション管理や
ビジョン経営が流行っています。

それを否定する気はありません。

ただ、大前提として、
ビジネスを立ち上げるということの本質は
トライアンドエラーの繰り返しです。

このような、海外では
路地裏の少年でも知っている至極当たり前のことを
教えてあげられる真のマネージャーの育成こそが
今の日本の企業が世界で
生き残っていくための「いろは」の
「い」なのではないでしょうか。



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