コラム

売らないセールス

コラム 2016/01/30


私は以前、食品サービスチェンの大企業で、

商品の買い付けをしていました。

1000人を超える世界のエース級の

セールスパーソン達を見てきましたが、

その中で気付いた事があります。

それは、売れるセールスは「売らない」

という事。

いくら熱っぽく自社製品の良さや

思い入れを語っても、

企業の買い付け担当は首を縦には

振りません。

個人のショッピングと違って、

企業がお金を払ってその商品を

買うかどうかの判断は

感情的ではなく、理性的に行われます。

もちろん、セールスもバイヤー(買い付け人)も

人間です。

個人的にウマが合う・合わない、

生理的に好き嫌いなどはあるでしょう。

しかし、プロの交渉の世界では、

必要な商品のみを出来るだけ安価で

買うというのが基本的な方針です。

個人消費のように、

場の雰囲気で衝動買いをしたりはしません。

このようなビジネス上の売買交渉において、

成果が出るセールスと

そうでないセールスの違いは

何なのでしょうか?

それは、売れるセールスはバイヤーの欲しい物を

具体的に聞き出す能力を駆使し、

欲しい物を

ジャストサイズ、

ジャストプライス、

ジャストタイミングで

提示しているという事です。

これが、「売らない」という事です。

売れるセールスは、

バイヤーが欲しいものの本質を引き出します。

例えば、商材をハンバーグとしましょう。

一般的にセールスであれば、

おそらく、肉や材料のグレードや配合、

重量、おおまかな販売価格、納期、

納品場所などを確認するでしょう。

しかし、出来るセールスはそれだけでなく、

なぜステーキではなくハンバーグを売るのか、

なぜ「今」ハンバーグなのか、

ハンバーグを商材に選ぶことになった経緯は何なのか、

それを社内の誰が(社長か?いち担当者か?)

推しているのかなどを、

上手に聴き出します。

時に、売れるセールスは

商談中に繰り出す質問を通じて、

バイヤー自身すら気づいていなかった

視点を与えたり、盲点に気づかせたりします。

そして、ハンバーグを肉の塊としての

ハンバーグではなく、ハンバーグという

食べ物としての本来的な価値に隠された

付加的な価値を、セールスとバイヤーの

協働によって理解します。

例えば、家庭の団欒を彩る豊かな時間の

演出のためのものなのか、

独身男性が帰宅後に簡便で食べやすい

という価値を訴求するためのものなのか。

そのハンバーグを、社運をかけた勝負の

商品と捉えているのか、

季節や地域、老若男女の別に左右されない

一般受けする当たり障りのない商品として

捉えているのか。

お肉の美味しさを究極まで高めた

肉汁たっぷりなリッチなグルメ層向け商品なのか、

脂肪分やカロリーを抑えてながらも、

しっかりとした満腹感を得られる

健康志向層向け商品なのか。

このような商品政策の意図を

しっかり整理しながら理解します。

その上で、

「欲しいのはこのような商品ではないですか?」

とさりげなく、商品を提示するのです。

Dollarphotoclub_47970158-2 のコピー

その時に大事なのが、

ジャストサイズ、

ジャストプライス、

ジャストタイミング

という考え方。

ちょうどいい量を、

ちょうどいい価格で、

ちょうどいいタイミングで

販売するわけです。

100個しか要らないのに、

1000個買ってくれたら割引しますよ、

などとは言いません。

1個100円程度で欲しいのに、

これは最高の和牛のハンバーグだからと

300円で売りつけたり、

あるいは、原材料費の安い鶏肉やパン粉が

多く入った外国産のものを50円で

売ったりもしません。

また、商品決定会議までまだ2ヶ月あるのに、

焦って結果(契約)を求めたり、

逆にその会議寸前まで

見積もりを出さないようなこともしません。

このように、相手すら気づいていない

欲しいものの本質を一緒に明らかにしながら定義し、

それをジャストサイズ、ジャストプライス、

ジャストタイミングで目の前に差し出すことができたら、

セールスは、売るという役割を担う人ではなく、

買うための支援という枠割を担う人になります。

そのようなセースは、どの会社にいっても、

どの業界に移っても重宝がられることでしょう。

皆さんの知っている「売れるセールス」とは

どんな人ですか?



pagetop