コラム

刺すには尖らせる

コラム,新着情報 2018/04/05


 

The blacksmith manually forging the molten metal on the anvil in smithy with spark fireworks

マーケティングにおいても採用においても
人の心に刺さるようなメッセージは
尖っているものです。

経営理念もそうです。

「最高のおいしさとおもてなしで
人々の生活を豊かにします。」
という飲食店の経営理念。

一見美しい理念のように見えますが、
このような経営理念では
「この会社でこそ働きたい!」と
思うような情熱を持った人材には
刺さりません。

なぜなら「最高のおいしさと
おもてなしで人々の生活を豊かにする」のは
理念ではなく、飲食店として存在するための
最低限の条件だからです。

この理念から、その会社を「選んで」
入社するほどの理由は見出せません。

特に、飲食業で卓越した成果を
出したいというプロ意識を持って
業界を研究しているようなハイレベル層に
「おっ!」と思わせる事は難しいでしょう。

それは似たような飲食店の数が
どのくらいあり、どのくらいの求人情報が
存在しているか想像してみるだけで
分かるはずです。

また、優秀層(あなたの会社で活躍出来る層)に
刺さらないだけならまだしも、
夢見がちなフワフワした層には意外と
刺さってしまったりするのが大きな問題と
なってしまいます。

dustcloth

(余談ですが、不思議とフワフワした理念は
フワフワした人を化学雑巾のように
引き寄せるものです。)

このような見た目に美しい企業の
最低限の存在条件を素晴らしいと
思うような人に入社してもらっても、
業務を任せられるレベルに
育成するにはかなりのコスト(時間)が
掛かってしまいます。

何より、業務に必要な「スキル」は
教えられても仕事に対する「情熱」の
持ち方は簡単には教えられませんから、
入社してしまった後の負担は相当なものです。

実際やってみると(業界研究をしていないから)
業務は意外と大変で、
面白いとも思えない仕事を笑顔で
こなさなくては叱られます。

そして、このあまりやる気のない新入社員の
育成は、そもそもお客様のために
忙しく働いていた稼げる先輩社員が
本来の業務の手を止めて行うのです。

そして、挙げ句の果てに
「私には合わない職場のようです。」などと
フワフワ層が言い出したりします。

これでは新入社員も、先輩社員も、
お客様も、そして経営者もハッピーな
結果にはなりません。

経営理念をしっかりと再定義し、
具体的なビジョンや行動指針が
伝わる形に再変換しないと、
ぼんやりした現状認識から、
ぼんやりした方向に、
ぼんやりしたやり方で進む、
ぼんやりした人を集めるための
採用活動をしてしまします。

ここで再認識しておくべきなのは、
経営的な視点で見た時の採用活動に
おける本来の目的は何か?という
基本命題です。

それは、「会社で活躍できる社員の純増」
です。

しかし、この基本命題を採用に
関わる全ての人が当たり前の認識として
共有できていない会社がとても多い事に
驚かされます。

これが採用募集費の垂れ流しを招きます。

採用広告会社はあくまで採用「広告」を
目的とした会社なので、定められた内容を、
定められた時期に、定められた数量の広告を
実施し、「出来るだけ多くの人を面接に
呼び込むこと」が求められる成果です。

したがって、見た目に美しい理念や
スローガンを掲げ、給与を高く、休みを多く、
仕事を楽に見せたほうが面接に来る人の数が
増えます。

しかし、この広告で集まって来る人は
美しい理念に惹かれた高い給与と多くの
休みと楽な仕事を求めるフワフワした人たちが
大半です。

そこに「この人なら会社の未来を切り拓いて
くれそうだ!」

と思える人材が混じっている確率は
非常に低いと言わざるを得ません。

結果的に、数多くの面接をこなすという手間と
疲労感とともに、採用数ゼロ、あるいは、
早期退職者候補を採用するという結果を
得る事になります。

採用の目的は「会社で活躍できる社員の純増」
であるにも関わらず、です。

そしてまた、目的が曖昧なまま募集広告に
「(広告会社にとって)魅力的な」記事を
書き連ねていくという無限ループから
始まってしまうのです。

 

mouse running inside a maze

そうではなくて、しっかり会社に根を張り、
成果を出せる人材を少数で構わないので
面接に来てもらい、高確率で採用すると
いった方法に転換することを強くお勧めします。

人が欲しいからと言って「赤字社員」候補に
最高のおもてなしをしては、
最高のおいしさは到底提供出来ないのです。

その為には社長の個人的な価値観や
事業に対する想いが具体的に
反映された企業理念や、映像化できそうな
明確なビジョンを作ることが
とても大切になります。

その為に必要なのは事業のコンセプトを
しっかり考えることです。

どんなお客様の、どんな時の問題を、
どんな想いや切り口で、どのように、
どのレベルまで解決するのか?

ここを考えるだけでも企業理念やビジョンに
深まりが出てきます。

先述の「最高のおいしさとおもてなしで
人々の生活を豊かにします。」という飲食店の
経営理念をどのように人の心に刺さる理念に
変容させることができるでしょうか?

採用という観点では、企業理念は社内にのみ
向けて発信すればいいものではありません。

是非、社外にも発信し、人を魅了するような
企業理念を作ってみてください。

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