コラム

採用活動前に整えるべき「育成力」とは?

コラム 2018/01/17


Farmer's hand watering a young plant

こんにちは。
ギャブリッジパートナーズ株式会社の松尾です。

前回、事業の発展の根源となる人材の採用活動に
頭を悩ませている企業が非常に多いというお話を書きました。

また採用というのは結果ではなくあくまで「経過」であり、
本当に必要なのは総合的な「人材調達力」になるとも
お伝えさせていただきました。

そしてその人材調達力というものには、
3つの柱が存在するとご紹介させていただきました。

それが、「育成力」「採用力」「代謝力」の3つです。

今回から3回に分けてこれらの3つの柱について
ご説明させていただこうと思います。

今日は、まず「育成力」からお話しさせていただきます。

一言に育成力と言っても、大きく分けて3つの要素が
あると考えています。

それは・・・

▼ (1) 自分の仕事の結果を他者や環境を言い訳にせず、
        責任と主体性ある行動によって業務を遂行する
        真の「リーダーシップ」

▼ (2) 相手の話に耳を傾け、その意図を正しく汲み取り
    相手が行動を起こすように意思を伝える事が出来る
       ビジネス上の「コミュニケーション力」

▼ (3)上司による明確な業務ビジョンと目標の設定と、
       それを実現する有効な行動のサポートがなされる
      「ビジョン実現力」


これらの3つのことが自然に指導されていく仕組みや文化が
会社に根付いている事が企業の「育成力」です。
なぜこれらの3つの要素が人材調達力向上に必要なの
でしょうか?

それは育成力が整っていなければ、採用本来の目的を
達成することができないからなのです。

そもそも採用の目的とはヒトという「経営資源の確保」が
最大の目的です。

経営資源とは何かと問われれば諸説ありますが、
最も基本的な経営資源を3つ挙げれば、
「ヒト」「モノ(ビジネスモデル)」「カネ」です。

しかし、従来、事業展開する上で必要であった資金調達は
長大産業が減り、金利が下がってきている日本では
以前程は重要視されなくなってきました。

多くのビジネスプラットフォームが共有され、
インターネットが時間と空間のギャップをなきものに
出来るようになった現代では、尚のこと
資金調達と商品調達(ビジネスモデル構築)の
自由度が上がって来ています。

一方で人材調達のみが困難を極めてきているのが
未曾有のスピードで少子高齢化が進んで来た
昨今の我が国の特徴です。

当たり前の事ですが、ヒトなくしてはモノもカネも
生まれません。
現代の経営資源の根っこは「ヒト」と言っても
過言ではないでしょう。

big old tree

しかし、数的にヒトの確保が出来さえすればいい訳では
ないのは言うまでもありません。

必要十分な数の社員一人一人が企業のビジョンを理解し、
ビジョン達成の原因となる目標に向けて適切な行動をし、
顧客やその企業の利益に貢献するようになる事、
あるいはそのような組織が出来上がる事が
「経営者が考える本来の採用の目的」のはずです。

(経営者はこの考え方を人事部長と共有すべきです。)

しかしこう言うと、多くの採用担当が口を揃えて
こうおっしゃいます。

「それは分かっているけど、そんな優秀な社員なんて
採用できないんだよ……」と。

ニワトリが先か卵が先かという議論にも似ていますが
一方では当たり前のように「優秀」な社員を採用できている
企業もあります。

そこで、どのような企業が優秀な社員を採用出来ているのか
紐解くと、共通して高い「育成力」を備えている事が
分かります。

例えば「「リーダーシップ」の観点から言うと、
部下が、あるタスクが完了出来ていなかった場合に、
育成力の高い企業の上司は「自責」として捉えます。
つまり、「伝えられていない自分が悪い。」と考えるのです。
しかし一方で育成力の低い企業の上司は「他責」と捉えます。
つまり、「理解できていない部下が悪い」と捉えてしまうのです。

また、「コミュニケーション力」の場合、
育成力が高い企業では相手の話を聴き、
その意図を理解した上で「伝わる」コミュニケーションを
意識します。
しかし育成力が低い企業ではとにかく言いたい事を
「伝える」コミュニケーションをしてしまっている場合が
ほとんどです。

さらに「ビジョン実現力」の側面から言うと、
育成力の高い企業の上司は部下のビジョンを叶えるために
目標達成から具体的な行動までを具体的に落とし込み、
それを部下と共有して進捗を確認しながらサポートします。
しかし育成力の低い企業の上司は、
「とりあえず頑張ってやってみて」と伝えるだけで、
その目標設定の妥当性や業務進捗の確認、サポートなどは
ほとんど行っていません。

同じ能力を持った社員が入社した時に、

(1) 相手視点で伝わるコミュニケーションをとる
  上司が自責(「私が悪かったのでは?」思考)で考える
  部下の目標達成のプロセスを通じてサポートする

(2) 自分視点で伝えるコミュニケーションをとる
  上司が他責(「お前が悪い」思考)」で考える
  部下の目標達成をサポートせず結果だけ評価する

(1)と(2)の企業、どちらの社員が成長できるか、
どちらの社員が働きやすいかは、火を見るよりも明らか
だと思います。

(1)を上司個人の能力に依存するのではなく、
企業として風土・仕組みを整備できている企業こそが、
「育成力の高い企業」と言えるのです。

そして人的経営資源を高次元で確保出来るための大きな鍵は、
実はこの「育成力」の高さにあったりします。

もちろんこれらの違いは組織としての一体感や働きやすさを
高めるだけでなく、業績にも大きな差を生み出します。

消火 勇気 チーム 力 消防隊

誰しも業績が良く、社員が笑顔で活き活きと働く会社に
入社したいのは言うまでもありません。

最近、「リファラル採用」という採用方法が少しずつ
人事の現場で定着して来ています。

リファラル採用とは、社員が自社で活躍できそうな
友人・知人を自社の社員候補として紹介し、
そこから採用をする手法を言いますが、採用費の高騰、
ミスマッチの多発を防止できるのがその大きな
メリットです。

しかし、このリファラル採用が実際に機能しているのは、
社員の満足度が高い企業(=育成力が高い企業)だけです。

社員が自分で働いていて満足できる企業と思うからこそ、
自分の友人・知人を紹介しよう、と思えるのです。

上記(2)ような従業員満足度の低い企業の社員からは
報奨金制度などを導入しても紹介が全く発生しない
いうのが現実です。

自分が満足していない会社に友人を誘えないというのは
もっともな事です。

つまり育成力を高めるということは、
社内の人材育成の仕組みを整えるということだけでなく、
それだけで採用対策になり得るという事に繋がるのです。

すこし厳しいことを言えば、社員の活躍や成長を
邪魔しているのは多くの場合その上司です。
本来もっと活躍できる社員の可能性の芽を摘んでいる
管理職がいないか現場をチェックしてみると良いかも
しれません。

ただ、そのような事例があったとしても絶望する必要は
全くありません。
育成力というのは、企業が持つ「機能」です。
「機能」は企業が本気で導入しようとすれば
研修や仕組みを導入する事で如何ようにでも
対策する事が出来ます。

これから先、育成力の低い企業は、採用難の影響をまともに
受けることになるでしょう。

そして仮に採用出来たとしても早期に離職してしまう・・・
しかも、最新の会社のビジョンに共鳴した、やる気溢れる
社員から辞めていくという悲劇を目の当たりにしてしまう
でしょう。

ビジョンとは、現状に変化を起こして勝ち取る理想の未来です。

単なる今の延長線上の未来に甘んじるか、
今とは違う輝かしい未来を勝ち取るか。

その鍵は会社の「育成力」の向上にあるのかもしれません。

次回はもう1つの柱、「採用力」についてご紹介します。

 

 

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